「けして本物になれぬ私が、貴方という仮面を借りて、貴方の偽物になりましょう。貴方の気高い魂はそのままに、一挙一動違わずに」

　カゲムシャ斡旋企業MEN In Factoryに所属する、自らの本当の姿と名前を捨てた男。自らを“偽物”と呼称する。コードネームはシラノ。
　彼は、生まれながらに知能・芸術・武術など、あらゆるものに対して天賦の才をもっていた。さらに彼は心やさしく勇敢で、謙虚で努力家でもあった。何をやっても誰より上手くこなし、誰よりも気高い魂を持った彼がしかし、人から愛される事はなかった。
　なぜならば……彼の外見は、生みの親すらも目を覆って嘆くほど、醜かったからだ。

　長き葛藤の末、どうやっても今の姿のまま愛されぬ事を嘆いたシラノは、本物の自分が愛される事を諦め、誰かの偽物……カゲムシャとして生きることを選んだ。
　他者の仮面（ペルソナ）を借りて偽物を演じる時、誰もがシラノの気高い魂を愛した。彼はその愛すら偽物である事にとうに気付きながら、それでも偽物であり続けようとする。
　偽物であろうと、けして手に入らぬ本物より、ずっとマシだからだ。