「緊急招集だと？糞ったれめ！！俺は久々に退院を許可された娘をつれて家族サービスの真最中だったんだ！！」
「でも、貴方が最もこの任務に適切で、そして最も迅速に対処できるのよ。」
「辞めてやる。こんな会社すぐにでも辞めてやる！」

――アルバートと早川美沙の会話




　アルバート=三鷹と言えば、過酷なミトラス戦争において部下の一人も死なせる事無く帰還した英雄の一人として名が通っている。部下を率いるカリスマ性、あらゆる武器や戦術に精通した知識、戦況を分析し最適行動を導き出す判断力…それらを彼は兼ね備えていた。
　しかし、そんな彼も今では所帯持ちの一介のサラリーマンだ。腑抜けきった彼の今の姿を見て、心底失望する軍人も少なくない。ただ、彼は戦地での悲惨な光景を前に、とうに精神をすり減らしきっていたのだ。そんな彼が戦う事を憎み、人並みの幸せを望んだ所で、誰に咎められよう。

　しかし、無情にもニューロエイジは彼に安息を与えはしなかった。彼の溺愛する一人娘が、電脳化治療時に重度の金属アレルギーを発症し、免疫抑制剤の投与と厳重な管理のされた病室での安静を強いられる事を余儀なくされてしまった。彼女の治療には莫大な費用を必要とした。
　そこで手を差し伸べたのが、千早重工後方処理科だった。彼らはアルバートを戦場に立たせる事を条件に、娘の治療費を全額負担するだけでなく、最先端の医療を惜しみなく受けさせる事を約束したのだ。

　かくして、英雄は再び戦場へ舞い戻った。
　愚痴を延々と吐き続けながら、娘を救うために彼は戦う事をやめない。

※20091011：NTW対応リビルド