最期の言葉は聞き取れなかった。
　恐らく彼は、何も言わなかったのだろう。
　呼吸器の外れたしわくちゃの顔を、そっと撫でる。しわくちゃの手の平としわくちゃの顔は、互いが互いの隙間をを埋めあうかのように沿い合って、淀みなく流れた。
　思えば、初めて出会ったときも、こうして触れ合ったのではなかったか。
　未だ混乱冷めやらぬ世の中の、何処だか暗い鉄火場で。賽の代わりに刀が二、三、悲鳴と怒号に混じって振られる中で。粗末な卓の脚の下で惨めったらしく震える彼と、一合視線が合った、次の間にはもう私は彼を欲していた。
　あぁ。思えば、彼の所為で酷く苦労をさせられた。思い返すだに、笑顔がこぼれる。
　彼は望むと望まざるとに関わらず――否、彼がそれを望んだ所は見たことがないが――奇妙な程に、暴力に好かれるタチだった。刃と拳と銃弾の右に左に行き交う中を、私たち二人は生きて来た。刃と拳と銃弾とを、受けて流して握り止め、私は彼と生き抜いた。
　そして今、彼は静かに生き終えた。

　残す余命にそれほどの価値があるとも思えないが、しかし、今日明日にもぽっくりと逝けそうな気もしない。
　生きるために手に就いた業で、生きられる職場が見つかれば良いのだが。

　

　

　立ち振る舞いも落ち着いたシルバーブロンドの老婆。腰も曲がっておらず、発言などもボケた様子はない。元々スレンダーな体つきだった為か体のバランスも然程崩れておらず、歳の割には若い体躯と言えるが、髪がすっかり白くなってしまっている為か、歳相応のようにも見える。
　若い頃はヤンチャしていたらしく、今でもその気質の片鱗が垣間見えることはある。夫を76年と2ヶ月守り続けてきた誇りから、対象を守ることにかける信念は決して曲がらない。
　カスタマイズしたマグネットグローブを用いて、指先や手の平で攻撃を受け止める技を持つ。バインドワイヤによる拘束術は、格下相手には有効に働く。

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化