災厄以前の日本で、エスパーという言葉が流行ったことがある。
　本来の意味ではＥＳＰ能力者を示すが、ＰＫ能力者も含めた広い意味での超能力者を指す言葉として用いられていた。彼らの主なお仕事は、テレビのステージで種も仕掛けもないスプーンを曲げて、ポラロイドでどこか遠くの景色を映し出すことだった。
　数多の「自称超能力者」たちが生まれ、時代と共に消えていった。

　

　さて。
　昨今のＮ◎ＶＡで、エスパーを自称する男がいる。
　歳は二十歳を迎えて間も無く、染めた頭髪は短めに。細められた目蓋の奥から、茶色の瞳が周囲を見渡す。
　彼の名は澄田 顕正。サイコキネシスに代表されるＰＫ能力のスペシャリストである。
　曽祖父はかつて一世を風靡した超能力少年・澄田 寛顕であり、その妻は霊能少女としてもてはやされた水保 恋子であった。その才能の全てを隔世遺伝的に受け継いだ彼は言うなれば「自称超能力者」のサラブレッドである。

　彼は大いに悩んだ。
　自分の力を一番活かせる場所はどこだろうか。偉大な曽祖父母のように、メディアに露出すべきだろうか？　いいや、今はニューロエイジだ。自分の力で出来ることなど、全てサイバーウェアとトロンで再現できる。トリックとみなされ、笑い者になるのがオチだ。災厄以前の曽祖父の時代でさえ、そうだったのだから。

　今は亡き曽祖父母の無念に思いを馳せる。
　本当に、人にはない異能を持ちながら、それが認められない社会で生きるのは、どれほど辛いことだったろうか。精神を集中させ、魂をすり減らし、漸く曲げたスプーンを、トリックだと貶されるのはどれほどの屈辱だっただろうか。

　彼は、自分の力が一切の誤解なく受け入れられる社会を求めた。
　その末に、彼はここに居る。

　

　昨今の聖母殿で、エスパーを自称する男がいる。
　男はＥＳＰｅｒを名乗りながらも、実際はＰＫの力のみを武器に退魔局で聖職をこなす。
　学生時代所属していた、ＳＰＣというクラブのコネから入信を果たしたその男は、敬虔な信者とは言い難いが、大変に仕事熱心だ。
　彼は今日も戦っている。自分の、自分たちの力を、少しでも多くの人に認められる為。

「これが僕の力だ――曲がれ！」

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6/21 SPCアクト向けに一部設定を追加。
　　 以下、更に追記。

　高校二年生の時にＳＰＣの副部長をしていたという経歴。
「超能力を世間から隠すことなく、もっと一般に知らしめるべき」という過激な持論を持っていたため（といって、無計画に吹聴するほどでもなかったが）、熱心な活動の割に三年次に部長となることはなかった。
　後輩の面倒見は中々に良い。よほどのことでない限り、頼られればＮＯということはない。
　なにせ、自分と同じ「超能力者」なのだから。

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化