「私は凡才だからね。凡才は凡才なりにできる事をやらないと」

「其処までにして戴きますよ。その非道な行い、神は全てお見通しになられていますよ」

「……もしもあの時、あなたから差し伸べられた手を取っていたならば、と考えると…私も未練がましいですね、紫織さん────」


片桐本家の現当主。悠の実父、哲哉・優姫の弟。
正義感が強く、片桐一族にはびこる様々な悪習を撤廃させようと日夜格闘を続けており、20年掛けて先代派から権力を奪い片桐一族を掌握した切れ者である。中でも最大の功績は、現魔術研究所長として片桐の姓を剥奪された子供達を実験台に供する事を止めさせた事だろう。
一応三重属性を持つ魔術師ではあるが、魔法の才能自体は二流といったレベル。それを非凡と呼べる水準にまで押し上げているのは、彼の持つ瞳術…常に相手の先を読む瞳の力によるものである。故に彼は呼ばれる。全ての嘘偽りを許さぬ瞳の持ち主と、その瞳を指して“Crystal Eyes”と。
なお、甥である片桐柚木に彼の双子の妹・柚葉の過去を教えたのは貢嗣である。これは無論、柚木から求められてのことである。
周囲からは、一人息子である悠が次期当主に一番近いと言われているが、彼自身は悠に跡目を継がせる心算はなく、純粋に片桐本家の当主に相応しい実力と礼節と倫理観とを弁えた人物が継承すべきだと考えている(つまり柚木が次期当主となる可能性を否定していない)。
更に貢嗣は、かねてより森ノ宮神社の武上本家へと嫁いだ妹の優姫に関しても、病死と見せかけた呪殺の疑いを抱いていた。神剣『建御雷』を御神体とするため強力な結界の張られている森ノ宮神社に住まう対象に対してそれを実行するのは決して容易な事ではないが、相手が弱っていて尚かつ術者が強力な魔力を持っているとするならば、それは決して不可能でないとも貢嗣の瞳と頭脳とは弾き出していた。そのタイミングは、基あるいは夏姫を産んだ直後であるだろうとも推測していた。実行犯としては哲哉もしくは彼に従う強力な術師を疑っていたのだが、武上本家の聖域で眠る神剣『建御雷』ならばそれを知り得ているだろうとも睨んでいた。そしてある一件において、貢嗣が立てた仮説の全てが真実であると判明し、片桐一族と武神一族との腹の探り合いは和解へと至った。


（「クリスタル・アイズ」かたぎり・みつぐ）



[以下秘匿情報]
▽かつて貢嗣には、心の底から愛した一人の女性がいた。彼女の名は白峰紫織(しらみね・しおり/カブキ　ミストレス◎●　マヤカシ)…潜在的に強大な霊力を持った、美しい女性だった。しかし女性関係に関しては奥手な貢嗣が行動を起こすより前に、その高い霊力に目を付けた実兄・哲哉が彼女に積極的なアプローチを掛けてその心を奪い、そして結婚・二人の子をもうけるまでに至ってしまう。しかし哲哉に紫織への愛情は欠片もなく、彼女もまた彼にとってはただの道具に過ぎなかったのだ。柚木と柚葉が生まれた時、娘の方が一切の霊力を持たないと判明してその子を研究所送りにしようとした際に、娘に柚葉という名を付けた上で激しく抵抗したが、哲哉の強大な霊力によって押し潰され、壮絶な死を遂げる事となった。この時紫織は最期の力を振り絞って、貢嗣を男として愛する事ができたなら良かった旨と二人の子供達の事を託す旨のダイイング・メッセージを貢嗣へと送っている。先代当主のこの所行を改革派の現当主・貢嗣が柚葉の過去を母親の最期も含めて知り得ているのは、これ故の事である。
彼女を実兄の手に渡してしまった事、そしてその結果として彼女を死に追いやってしまった事は、貢嗣にとって目下のところ人生最大の過ちであると今も考えている。

▽また、実のところ一人息子の悠はいわゆる「愛妾の子」である。真に愛する者以外と肌を重ねる事を良しとはしていない貢嗣は、ニューロエイジでは既に当たり前の事となっている体外受精によって悠をもうけている。愛妾である守村美弥(もりむら・みや/ミストレス◎　マネキン●　マヤカシ)を籍に入れていないのは、霊的資質を持っているとは言えども基本的に一般人である彼女を片桐一族に関わらせたくなかったからである。勿論、貢嗣とて美弥の事は大切に思っており生活費の送金などを欠かした事はただの一度もないのだが、紫織に対する感情とは明らかに異なっているとも認識している。美弥は貢嗣を心から愛しており、望めば貢嗣とも息子の悠とも会える現在の境遇に対して不服を述べた事は一度もない。また、悠が未熟な部分もあるとは言えども周囲の環境にめげず精神的に屈折せずに育つ事ができたのは、美弥の影響が大きいのは言うまでもない。

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化