「こんな雨の日だって、良い事はあるんだ。さ、顔を上げて。」 

　ストリートでフェイトをしている女。 
　抑揚の少ない人工音声で話す。 

　子供の頃、爆弾テロで両親を失っており、ストリートの老フェイトに拾われた。
　歌声が自慢で歌手を目指していたが、爆炎で体の一部と共に喉もやられ、生きる希望を失う。
　しかし、老フェイトに人生を救われ、彼の死後、その後を継いでフェイトとなった。

　電制機器へのハッキングによってバックアップを得意とするニューロでもあり、彼女がハックした機器たちが、まるで歌うように調律を合わせた音を発する事から、彼女のバックアップを「歌姫の加護」と呼び、慕う者も少なくない。 
　彼女は別の形で、昔の夢を取り戻そうとしている。

　行き場を失った人を放っておけないウェットな性格。 
　よく雨の日に、路頭に迷った人を拾ってくる。 

　黒髪ショートの素直クール。


----------------------------

　ある雨の夜に、じいさんが私を呼んだんだ。ボロアパートの小さな吹き晒しのベランダには、空き缶や穴のあいたバケツなんかのガラクタが山ほど置いてあってさ。おじいさんが私に言うんだ、「耳を澄ましてみな」って。 
　すると、雨粒がガラクタにぶつかる音が、不思議と重なり合って、音楽を奏ではじめた。まるでガラクタ達が“歌ってるよう”だったよ。 

「言葉も持たないコイツらでも、こうやって歌う事が出来る。何もかも無くしちまっても、まだ出来る事ぁある。お前さんもまだ、夢を捨てる事ぁ無い。」 
　じいさんは笑って、私の髪をクシャクシャに撫でた。 

　もうじいさんは死んじゃって、私はじいさんの跡を継いでフェイトになった。 
　今でも、歌うのはやめてない。声は出なくても、歌える歌があるって教えてもらったから。 

　だからほら、君だって絶望する事は無いんだ。 
　まずは立って、うちに来て、シャワーを浴びて、その濡れた服を乾かして。 
　そして、もしよかったら…私の歌を聞いていってくれないかな？