「………………………………………………」
　　　　　　　　　　　―――聞き取れぬ言霊。読唇術なら使わないほうがいいぜ？

昼は占い師。
その美貌も相まってか人気がある。
客なんてのは、自分が言ってほしい事しか望んでいない。
悪い占いは信じない。いい占いなら信じる。
そう、人気があるのはいい占いをする占い師って事だ。
言ってほしい事を見抜くのが占い師の腕って事でもある。

夜は水商売。
言ってほしい事を見抜く、それは水商売も同じだ。
甘い言葉と駆け引き。心が交われば身体も交われる…それは男の幻想。
身体は交わっても心は交わることは無い。それが男女の溝である。
その美貌と身体をちらつかせつつ、金を毟り取る。

退魔師である。
相手の心を土足で踏み躙り、一番触れてほしくない部分を突く。
それは相手がアヤカシだろうが関係ない。
彼女は心を蹂躙し、真名を暴き、魂を破壊するだろう。

聖母殿のエージェントである。
街に溶け込み、イザという時には聖務をこなす。

どの道も彼女には簡単な事だ。
彼女の能力は『読心術』。頭の中を覗ければ、世の中の総ては事も無い。