「み、皆さん…け、喧嘩はやめてください…あ、いえ、な、なんでもない…です」
　――注意するなら最後までしましょうよ。

「に、兄さん…やめてください！　無闇に人を傷つけないでって言ったでしょう！？」
　――兄には意見します。無駄ですが。


“たおやめ”さえじま　みのり

あの兄にしてこの妹は無いだろう。
天上天下唯我独尊なあの男の、実の妹が彼女である。顔立ちこそ似ているが、性格は見事に反対である。
いつも自信がなさそうにおどおど。繊細な心の持ち主で、失敗するとすぐに落ち込む。
それでも真面目に一生懸命な性格で、人を傷つけたり、争うことを嫌う。

そのため、兄の言動には常に振り回されている。
しかしどんなことをしても、それが結局兄なりの愛情表現であることも理解はしているため、せいぜい行き過ぎた時に制止するぐらいしか出来ないでいる。もっとも兄の方はその程度の制止は制止とすら思っていないのだが。

なお普段は普通に学校に通っているが、兄の独占欲により、研修生と言う形で千早で働いている。もっとも現場に出ることはなく、簡単なデスクワークをするだけと言う、「ただいるだけ」の社員なのだが……。


裏設定

今の兄は、かつて自分が殺害した実の兄の記憶を埋め込んで作ったもの。
だが新たに作り出した兄は、人格カードを読み込んで性格形成を行う段階で生じたバグのせいで、人を人とも思わない冷酷な性格になってしまった。
だからと言ってもう一度作り直すには、今の兄をもう一度処分(＝殺す)しなければならない。
ゆえに兄には真実を告げることも出来ず、そして誰にも打ち明けられず、兄を穢してしまった罪を自分一人の胸のうちで懺悔し続けた結果、今の内向的な性格になっていった。
生前の兄と今の兄に共通するもの。それは、妹である彼女を想う気持ちである。

今のところ、兄には死んだ前後の記憶が蘇っているようには見受けられない。
それに安堵しながらも、いつ今度は思い出すのか、そして思い出した時に兄がどんな行動に出るのか。それを考えるたびに、彼女は怯える。
それでも、今度はずっと兄にそばにいて欲しいと言う矛盾した気持ちを抱えている彼女の心の闇は、晴れることはない。

メモメモ

【罪】
愛する兄を殺害したこと。
兄を穢す形で蘇生させたこと。
今の兄を止めることも出来ないでいること。

【罰】
兄を再び喪わないために、罪を告白できないでいること。
それでも兄と共にいたいという気持ちに気づいていること。