「…なんだっけ。『人間万事…』…あれ、塞翁で合ってる？」
　――物覚えがあまりよくないらしい。

「何故、歩み寄ろうとしない！　何故、分かり合おうと――しないんだ！」
　――悲劇に悲劇を重ね行く者達へ。



やたらでっかい牛頭叉を手にした、フリーランスの荒事屋。
軽薄な雰囲気が如何にも頼りなさそうな感じだが、『無間戦場』と呼ばれる心象風景を周囲に投影する術と、敵の肉体ではなく精神を断ち切る剣技の持ち主であり、その実力は高い。だが二十年近く前に死亡した。



[ネタバレ設定]

本名:神室喬久。元々は高名な退魔師を多く輩出した一族の出身。
しかしその嫡出であるにも関わらず、その一族の者が皆有する異能を受け継がずに生を受けた。ただ幸いにも実兄が強い霊力を有していたため、後継者問題に関しては憂いがなかった。――が、一族の者が得意とする精神を斬る剣を実兄よりも早期に習得したことと、その一族が所有する魔器に幼くして認められたこと、そして本来持ち得ない異能の術『心象風景投影法』を習得したことから、その才気は実兄よりも勝るのではないかと囁かれた。そして分家が中心となった内紛に巻き込まれかけたが、当時の当主が病死した際の遺言により実兄が家督を継ぐことになり、自身は実家を離れてフリーランスの剣客になった。
元より野心や家に対する執着心もない彼は、むしろ自由となったことを喜んだ。実兄も彼のそういう気質を知っていたため、当主となって最初にしたことは彼を実家に縛られない自由の身にさせてやることだった。このことから、両者の関係自体は良好であった。

流れの剣客となり、諸国を放浪。その時に訪れた地で、彼は運命的な出会いを果たした。
人々に虐げられる鬼の一族。異形であるがゆえに畏怖され、その畏怖が曲解されて人々に迫害されることとなった一族である。
彼らは鬼の中でも血脈が古く、更に食人衝動が本能として備わっている一族であった。だが永い時の間にその本能は弱まっていた。それにも関わらず、彼らは人里離れた地で細々と暮らしていた。――迫害される恐怖と、いつ目覚めるか分からない本能に怯えながら。
その一族の娘が、人間によって虐げられている現場に居合わせた彼は、居ても立ってもいられずに鬼の娘を人間たちの手から助け出した。少女はまだ魔性に目覚めていなかったが、鬼であるというだけで迫害の対象にされた。
このことがきっかけで、彼は人でありながら鬼の里に招かれ、鬼の一族達と交流を持った。そして彼は、鬼の娘と恋仲になった。

だがある日、鬼の里がとある退魔集団によって襲撃された。
彼は鬼達と共に応戦したが、圧倒的な数の前に敗れ、里は無惨にも蹂躙された。彼は最後まで踏みとどまろうとしたが、鬼達は協力して娘と共に彼を里から脱出させた。
生き残ったのは、彼と鬼の娘だけ。残る鬼達は全て殺害された。その時、防衛本能で鬼の力を使った者は多かったが、それでも決して人を喰らうことはなかったと言う。

鬼達が命がけで二人を逃したのには理由がある。それは、娘が子を身籠っていたからだ。
生まれ来る子の未来のために、父と母になる二人を鬼達は命がけで守り抜いた。
故郷を失った娘と腹の中の子と生きるために、彼は実家に帰還することを決意する。
表向きの扱いは勘当であったため紛糾を呼んだが、当主となった実兄と、実兄に味方する者達のとりなしで実家に戻ることを許され、鬼である娘は実家が所有するアストラル領域に匿われた。
ようやく鬼の里で過ごしたような平穏な日々を取り戻し、我が子の誕生を待ちわびる幸福の中にいた二人に、二度目の悲劇が訪れたのは、それから間もなくだった。

その時に起こった悲劇により、彼は命を落とす。
我が子の顔を見ることもなく、彼は味方だと思った者達の手によって無惨な死を迎えた。
そして三度目の悲劇は、その死が引き金となった――。

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化