ブラックハウンド機動捜査課の隅に奇妙な時計が置かれたのは、去年の夏ごろからだった。
　およそ６０cm四方の黒い箱。一定の間隔で蛍光塗料が浮かび上がり、それはニューロエイジの世界地図を描いている。Ｎ◎ＶＡやニューフォート、ルテチアなど、世界の主要都市に当たるところにはアナログ式の時計が埋め込まれ、各地の現地時間を正確に示している。
　それだけならば、ただの趣味の悪い世界時計である。だが、この時計の奇妙な点は、この時計が時々、ひとりでに動き出すことがある、という事実なのだ。
　オマケに、この時計はちょくちょく事件現場に現れては、そこそこ事件とかを解決して、ほどほどで帰ってくるというのである。

「あー、乳酸出なくても人間疲れるもんねぇ。月末は絶対休暇とるぞー」

　……いやまぁ。
　実際は別に謎でもなんでもなく、彼女も立派なブラックハウンド隊員だから、仕事で捜査しているだけなのだが。
　そういうテレビ特番が、二年前くらいに組まれたそうである。

　

　ニューロ要員としてブラックハウンドに入隊した後、事件とかとは全く無関係に交通事故で重傷を負った彼女は、全身義体に乗ることになった。
　ブラウン・ジョブにでもしておけば良かったのだが、その時彼女の脳裏になにやらピンとくるものがあった。

「出勤した時、見た目箱になってたら超面白いんじゃないだろうか」

　――結果はドン引きだった。

　

　テレビ特番でのインタビューでは、少しでもニューロとしての仕事に役立てるよう、サイモンを選んだと答えてておいた。
　女ってのはシタタカなもんである。

▼能力値上昇
▼技能修得　10
▼常備化