「狼が、来るよ」　　―狼少年はかく語りき―

ケインは、普通の家庭に生まれた。
ケインはよく「狼が来る」と口にしたが、誰もそれを信じなかった。
それも当然、”狼”はケインにしか見えない存在だったのだ。
”狼”はいつも遠くから彼を見ていた。
それがケインを見守っていたのだと知ったのは、ある冬の日だった。

銃を持った強盗が家に押し入り、家族を皆殺しにした。
父を、母を、そして姉を撃った犯人が、クローゼットの奥に隠れていたケインに気付き銃口を向けた時、”狼”はその牙を剥いた。
疾風のような速度で窓から飛びこんだ”狼”は犯人の銃を持つ腕を咬み千切り、その喉笛に喰らい付いた。
敵を倒した”狼”はケインには牙を向ける事無く、その足元にうずくまると……霧のように消えた。

全てを失った少年が得たのは……ただ一つ、かけがえのない友。

原因不明の惨殺劇の重要参考人として厳重監視下に置かれた少年は後に聖母殿に保護され、そこで家族を奪った相手がケインの能力に目をつけた氷の静謐の一派だったことを知る。

今、彼の胸に在るのは、憎しみではなく後悔と決意。一度失った物は決して取り戻せない。だからこそ、ケインは戦場へ赴く。自分と同じ境遇の者をこれ以上増やさないために、ただ傷つける事しかできない”狼”を連れて。

【狼】
実体のある幻覚とでも称すべき現象。
ケインにしか見えない”狼”の爪牙は、一片の慈悲無くケインの敵を引き裂く。

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化