「サロンの秩序、人妖の協定、或いは森羅のバランス。そういう物のためには、私みたいな存在が居た方が都合が良いんですよぉ」
　　　　―――にこりと笑い
　
「―――はい。それでは、本日貴方にお願いする依頼ですけど―――」
　　　　―――はてさて、それはどんな厄介事か…？
　
　常に笑みを絶やさない妙齢の美女。
　彼女――――シリカ・エリ・レントに関する評価は、概ねそんなものだろう。
　―――ただし、『腹に何を抱えているか分からない』という前置詞が付くが。
　
　サロン・ドルファンに所属するアヤカシであり、サロン内部の厄介事の解決を仲介する仲介屋。
　個々の力量が特に物を言うアヤカシの中において、彼女のようなスタンスで生きている者は非常に珍しい。
　彼女はその顔の広さを活かし、揉め事の仲裁、裏切り者の粛清、探し物、探し人、果ては夕飯の買い物依頼まで。サロン内部におけるありとあらゆる依頼を仲介する、アヤカシ専門のフィクサーだ。
　もっとも、その顔の広さは更に進化しつつあり……最近は人間の魔術師などにもコンタクトを取るようになってきている。
　
　仲介された依頼の解決のため、人間の手すら借りる彼女の姿勢にはプライドの高いアヤカシなどは眉を顰めるが……最終的にはサロンが最も利益を得るように立ち回る彼女の政治的なバランス感覚は、非常に優れた物である。
　個人の力量を頼みにするアヤカシは、しばしば過信により身を滅ぼす。しかし彼女はオノレの力量を弁え、このようなスタンスで生き抜く道を選んだ。
　そのためか……客観的な判断の出来る仲介屋として、アルドラからの信用すら確保している。
　最も、サロンの利益に影響の無い些事においては個人的な『楽しさ』を優先する傾向もあるのが玉に瑕だが。
　
　ちなみに、彼女自身は頭脳を武器にするタイプには珍しい獣の一族。
　狼のアヤカシであり、肉大好き。食欲旺盛で、しばしば彼女の家付近では小動物が消え去るという怪現象も。
　小動物系のアヤカシが彼女を恐怖の目で見ることがあるのは、気のせいであると思いたい。

▼能力値上昇
▼技能修得 20+40+30（暫定）+15+15+15=135
▼常備化 16