「いらっしゃいませー。無名工房へようこそ。」
――呪物で一杯の工房から顔を覗かせ。

「どんなおまじない(cantrip)にしましょうか？」
――クライアントに不思議な紋様をペイントしながら。

　スラムの片隅に位置する呪物商店、『無名工房』の主。
　商店とは名ばかりでお客が来るのは月に２，３回。店の中は売り物もガラクタも区別のつかないカオスだが、見る者が見れば、力のある呪物を散見する事が出来る。
　お客さんには、日々の研究の成果の「まじない(cantrip)」をかけてくれる。形は呪文だったり呪物だったりボディペイントだったりと様々。ニーズに合わせて、刃避けの呪（SSSに孫の就職が決まったお婆さんが頼んでいった）や失せ物探しの呪（結婚指輪を無くしたお父さんが、血相を変えて駆け込んできた）等など、種類は豊富。
　とは言え、『魔法』を研究している変人、というのがご近所のもっぱらの評判。時々子供が肝試しにやってきて、お店を荒らしていく事も。
　
　そんなのんびりとした生活の中にいるシオンだが、かつては数多くの存在と盟約を交わした召喚師だった…らしい。もっとも、輪廻転生のしすぎで、とうとう経験点が０になってしまったそうだが。本当かなぁ。

　トレードマークは、ポケットサイズの呪文書。