「俺を縛る常識は爆破されたのさ。爆轟の時代に相応しくね」

　世界中に無数に存在するM∵C∵A本部と首領。
　その内の一人に、太陽すら克服する強大な魔力を持つ上古の吸血鬼がいた。
　強大な力と歪んだ思想で多くのテロを起こしたが、最終的にとある退魔師に討伐され、吸血鬼の指揮するM∵C∵Aは滅びた。

　しかし、物語はそれで終わることはなかった。
　生き残った部下が、吸血鬼の亡骸から血液を抜き取り、培養して輸血用血液として市場に流したのである。
　それは、主である吸血鬼の血を引く後継者を作り出すことが目的の行動だ。
　後に、無差別輸血テロと呼ばれたこの事件は、強力なアヤカシの血によって変容した数多の犠牲者を生み出し、その大半が理性のない怪物と化して駆逐された。

　その中でただ一人、古の吸血鬼の血を正しく受け継いだ若者、それが彼だ。
　それまでは何処にでもいるようなエキストラであった彼は、人を捨てる事で一気にキャストへと昇格した。
　アヤカシとしての“親”である吸血鬼とは違い、彼は世界を滅ぼすとかテロとかそんな事には微塵も興味はない。
　狡猾かつ残酷に、人の顔とアヤカシの顔を使い分け、あらゆる物を利用して己の欲望を満たす事だ。

　未だ不完全ながらも、その為の力は彼にはある。
　そんな彼の頭を悩ませる事は、彼を主と仰ぐ自称部下が時折現れては「世界を滅ぼすのは何時ですか？」と真剣に聞いてくる事だ。
　自称部下には彼の“親”たる吸血鬼を妄信的に慕う下級で知能の低いアヤカシが多い為、適当にあしらってはいるものの、酷い時は毎日のように押し寄せる自称部下達に彼は心底辟易している。

「……今はまだその時ではない。わかるな？ わかったら下がれ」

▼能力値上昇 ▼技能修得 ▼ブランチ ▼常備化