「心を静かにし、集中せぬか。心乱されてはならぬ――お主になら出来る」
　厳しくも心温かき教導役。

「お主は眩い素質を持っている。伸ばすのだ――そして、良い魔術師になるのだぞ」
　時に厳しく、時に優しく。

　世界魔術協会長老部の使いで、優れた素質を持った魔術師の“教導役”。
　現れる時は、何時も鴉の外見である。
　長老部の所有する最高級のアーティファクト/魔術工芸品の、同型三種の内の一つ。
　優れた素質を持った者のお目付け役として、その成長を見守り、補助するのが役目。
　その指導は厳しくも何処か心温かく、目に掛けた生徒の才能の開花を手助けする。

　長老部の意向を受け、対象への伝言、監査、時に処刑まで行い、組織の暗部も担当する“伝言役”が壱式。
　弐式は素質ある者を見出し、育て上げる“教導役”を主とし、政治的な側面は薄いとされている。

　だが、長老部の意思はもっと深い所にある。
　峻厳なようで情深い“弐式”に、素質ある若者が触れ合うことで培われる温かな感情。
　その感情を組織に対する“安全弁”にしようと言う思想が根底にある。
　故に、決して心を許してはならない存在。
　だが、魔術師と言う特異な環境に育った者にとって、彼の存在のもたらす温もりの情は抑え難い。
　志の決まらぬ内から有望な新人に目をかけ、協会組織の動かしやすい方向に導き育てる。
　それが“教導役”の真の仕事である
　
　弐式の欠点は、その情の振れ幅が大きすぎること。
　昨今、その傾向が次第に増しており、長老部でも懸念の声が上がっている。
　情に流させるのは良いが、自らが情に流されるのは禁物であるがゆえに。
　壊れた道具に用はない。
　何時か、長老部の手で使い捨て同然の任務を割り振られるのも、そう遠くはない未来の話であろう。


　過去の大魔術師が西洋の錬金術と東洋の式神の技法を掛け合わせて作成した、同型三種の魔術工芸品の一つ。
　その存在には、人の魂が原型に用いられている。
　弐式の原型は、かって東の都にて伎楽と手習いを教えていた一人の女性。
　“楓”と言ったが、今は知る者とてない名前である。
　

▼能力値上昇
▼技能修得
▼常備化