（覚醒前）
「私が世に闇をもたらす者ならば……どうぞ戒めて下さい」

（覚醒後）
「アハハハハ！いいわよ、いらっしゃい。そして私の糧となるのよ！！」

北極・ドゥームドモスクの地下深く、巨人の牢獄（タルタロス）に最も近い暗闇の地下牢に彼女はいる。
自らの意志で這い出ることも許されず、神の命に応じてのみ動く事が許される…………

アロセールは、ヴィルヌーヴの片田舎で母親と一緒に暮らしている、普通の少女であった。
彼女は敬虔な真教信徒であるが、顔を知りもしない父親の血が、彼女の人生を変えた。
父親は、災厄前より生きる吸血鬼の長であり、アロセールは母親とその吸血鬼との間に生まれた子だったのだ。
永生者ではないが、純然たる始祖の血を継ぐアロセールには、強大な魔力が宿っていた。娘の幸せを望んで父親から離れ、片田舎でひっそり暮らそうという母親の願いも空しく、アロセールは聖母殿に捕らえられた。
即座に異端審問にかけられるが、真教に殉じる敬虔な姿勢から、断罪は免れた。しかし強すぎる始祖の血の力のため、教会はアロセールに自由を与える事を許さなかった。二重の戒めを施され、五感すらも閉ざされ、地下に幽閉されることとなった。そしてさらに、敬虔なる真教信徒として、聖母殿の聖務に従事するよう命令されたのだ。
はじめのうちはなぜこの様な目に遭うのか、わけがわからず気が狂いそうになっていたが、最初の聖務で解放された折、自分の内にある始祖の血統が、自分の人格をも変えてしまうほどに強大な妖気を以て暴走しかけた。
このことでアロセールは、自分だけでは抑えきれないと悟り、それからは従順に拘束に応じるようになった。

戒めは、アロセールの始祖の力を封じる術式と、聖別した拘束具によって二重に施された。
それは神徒として敵と対峙するまで解く事を許されず、聖務の際の移動の時は、受動的な感覚を一部（触覚・視覚・聴覚）解放するのみに留まらせ、磔に使用する小型の移動拘束台を用いて拘束されたまま移動を行う。声を出す事もかなわぬため、会話は結線されたポケットロンに映し出された文字で行う。
解放された後は、その解放感から気が緩み、大抵血を呼び覚ます結果になるが、聖務終了直後に再び拘束状態に強制的に戻る魔法的仕掛けが拘束具に施されており、大人数の司祭が執り行う儀式によって成立した拘束術式は、如何に強大な魔力を持つ始祖の子であっても簡単に破壊する事は出来ず、時が経てば膨らんだ風船の空気が抜けていくように元に戻って行くため、大事に至った事はこれまでない。

気が狂いそうになる暗闇から外に出られたとしても、手足を完全に拘束され、あられもない姿を曝さねばならない屈辱に、胸がはりさけそうになる。
が、一時だけでもその身体が解放される至福感は、今のアロセールにとって、何ものにも替えられない、生きている幸福を味わえる時なのだ。
だからその時が一度でも多く訪れる事を望みながら、今も暗闇と静寂に懸命に耐え忍んでいる。それがいつ終わるとも知れぬ、無限地獄であることも知らず…………

▼能力値上昇
▼技能修得 一般55+社会25+コネ0+アヤカシ65+バサラ10+カリスマ20
▼ブランチ 10
▼常備化 72+

※参加アクト
06/08「脱出◇不可能？」（RL/氷川由乃梨氏・14）
07/01「邂逅」（RL/蒼天氏・12）